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アネモネとアクアリウムの話をする

  • 執筆者の写真: Chisato Mitobe
    Chisato Mitobe
  • 2017年11月2日
  • 読了時間: 4分

あの一連の作品群が持つ意味を、もう一度考えようじゃないかという話です。

・前提

アネモネは審神者と長谷部が本丸を出て生活を始めてから約一年間の話。舞台設定のようなもの。

アクアリウムはその先、紆余曲折を経てどうにかこうにか彼等なりの幸せというものを見出し始める話。

・そもそも

審神者の過去はここでは割愛。本丸に就任→長谷部を手に入れる→戦争終結→現世へ帰還。

帰還後は政府直属か関連かその辺に職を得て働いている。

長谷部には手を出さないようにしている、但し「ħ」や「花に露」のような例外あり。

ここが重要な点で、性的嗜好については就任以前から帰還後まで一貫して変わらない。つまりアネモネ・アクアリウム軸でも長谷部を嗜虐したいとは思い続けている。

・克服へ至る過程

その欲求を克服する為の過程に絶対不可欠だったのが「ħ」。

自分の不安を吐露し=主という殻を一旦脱いで自分を晒け出し、自分の欲求に向き合うことができるようになる話である。

(話のラスト、前は目を背けていた血痕を綺麗に拭いてしまおうと思っている。向き合わなければ汚れを落とし切ることはできない)

ただ、ここで向き合ったこと=解決とはならず、例えば「花に露」、酩酊して理性の箍が外れた状態では容易に情動へ身を任せ、他作品でも自分では幸せにしてやれないと自覚して悩んでいる。向き合った末に結局抑えられなくなり、長谷部を傷付け始めるのが本には未収録の「夢の話」や「ゼラニウム」。

あくまで〝目を背けることはなくなった〟というのがこれまでの収穫。

・アクアリウム

「楽しいだけの一日」という思い出を残してやりたいと思ったその意図は、他でもない、〝今後自分が誘惑に負けてしまってもその思い出さえあれば長谷部は耐えられるだろう〟という汚い思惑。

したがってこの話は予防線でしかなく、直視した結果自分の欲を抑え切れる自信がない、だから長谷部に心の拠り所を与えておいて許してもらおう--そういう意味を持っていた。

実際この試みは上手く行って、というのはこの軸ではこれより後、本当に駄目になってしまう話は存在しない(と決めた)。しかしそれはあくまで結果論、審神者が逃げの一手を打っておいたことには変わりない。

・本丸の外は幸せか?

手入れができなくなった以上、長谷部を思うように傷付けることはできなくなった。審神者は自らの性的嗜好と向き合って、整理を付け、行動しなくてはならなくなった。

長谷部にとっては間違いなく幸せで、それは何より理不尽に身を切り刻まれることがないから。その上審神者と二人きりで暮らしていられる。

しかし審神者は悩み、思うようにいかない自己の制圧に苦しみ、それを見た長谷部は心を痛めるし、時には暴力に巻き込まれたりもする。

これを乗り越えられない限り、二人はおそらく、外に出るよりも本丸に居た時の方が幸せだったということになる。

但しそれも〝乗り越えられない限り〟なので、克服することさえできれば、遥かに幸せな、笑顔に満ちた生活になることは間違いない。

では克服できるのか? というと。

「ħ」で得たものを糧に、「アクアリウム」の頃には頭を撫でるなどの身体的接触も図れるようになっていて、この後抱き締めたりは普通にするようになる。とはいえまだ欲求は消えていないので相応に苦しんでいる筈。

おそらくもう少し後、場合によっては十年単位で時が経った後、審神者が長谷部へ別の感情を抱くようになって始めて〝克服できた〟と言えるようになる。

審神者にとっては気の長い話でも、数百年を生きてきたであろう長谷部にとってはそんなに長くないんだろうな。

しかしそんなに先の話を書ける気がしない。私自身、まだ克服できないからだ。

・まとめ

アネモネからアクアリウムに至るまで、二人が得られたのは〝幸せになる為に不可欠な鍵の一つ〟でしかない。繰り返しになるがそれは〝審神者が自分自身ときちんと向き合ったこと〟。

つまりスタート地点に経っただけじゃないかという話ではあるものの、この二人にとってそれがどれだけ大きな意味を持つかは計り知れない。何せ異常な関係性なので。

そう考えると、本丸後の世界というイレギュラーな場ではあるが、二冊使ってでも彼等を書いた意義は結構大きかったのではないかな。

アネモネもアクアリウムも、話は勿論のこと装丁が本当に気に入っているしもっと色んな人に読んでもらいたいなと思うんですけどね。やはり前提として絶対に欠くことのできないR-18G的事情がネックになって難しいでしょうね。

蛇足ですが……

この二人のことはよく考えるのですが、撫でたり抱き締めたりぐらいは多分普通にできるようになっていると思われます。

ただ死ぬまで審神者は性行為だけはしないでしょうね。設定組んでた時にその辺も全部書いてあるんですけど、そもそも一般的な行為は全部しないです。口付けるのも自慰も。

それを長谷部側がどう思ってるのかはよく分かりませんが。

 
 
 

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